2012年5月3日木曜日

総資産回転期間の分析(石油資本編)

個別株に投資する際、怖いのは、企業の変化を見過ごしてしまうことです。事業が非効率化している兆候を見過ごせば、損失を被る可能性が高くなります。優良企業に投資しているとはいえ、自分の軸をもち、売るべきときは売る必要があります。盲目的にアホールドするのは、宗教でしかなく、賢明とはいえません。

さて、総資産回転期間は、総資産÷売上高で計算される財務指標です。これは資産の効率性を表す指標で、この値が小さいほど、資産が有効活用され、売上に繋がっていることを示します。

また、粉飾を見破るにも有効です。なぜならば、粉飾は①資産(例えばのれんなど)を過大評価するか、②売上高を水増し(例えば循環取引など)しておこなわれることが多いからです。①と②を同時に行った場合は、見破ることはできなくなりますが、多くはこの指標を観察することで異常を察知できます。

今回は私が投資している石油資本企業と、同業他社について総資産回転期間を計算してみましょう。
まず、私の投資しているYPFは、2010年まで基調的に数値が低下しており、資産を効率的に利用できるようになりました。アルゼンチン政府が主張するように、設備投資をあまりしていなかったのかもしれませんが、少なくとも効率的に事業を行っていたことがわかります。もちろん、寡占企業が強気の営業をおこなっていた可能性も否定できません。国営化に伴い、効率が低下してしまうことには留意が必要ですが、これはすでに株価に織り込まれてしまいました(トホホ)。

ConocoPhillips(COP)は、Exxon Mobil (XOM)や、Royal Dutch Shell (RDS.A)と水準は等しいのですが、ややブレが大きい点が気になります。ギリギリで許容範囲といえるでしょうか。他社に比べ株式市場での評価が低いのは、こうした点が影響しているのかもしれません。

最後はChesapeake (CHK)です。天然ガス採掘最大手ですが、ガス田資産が有効活用できていないことが明らかとなります。ガス田を掘りまくっているのはいいのですが、天然ガス自動車や、発電・石化プラントなど、受け入れ側のインフラが未整備で売上に結び付いていません。金利負担と販売価格の暴落(同社は殆ど価格ヘッジをしていない)への対応を慎重に見極める必要がありそうです。