2012年6月10日日曜日

アメリカ企業の恐るべき自社株買い―日本企業は本当にキャッシュリッチか?―

フィリップモリスやエクソンモービルの株価はなぜこれほど右肩上りなのか?、逆に日本企業はそうでないのか?と常々疑問でしたが、アニュアルレポートを読んでいて気づいたことがあります。

アメリカ企業は、自社株買いによって株価を維持しています。しかも超一流の企業は、配当支払総額以上の自社株買いをしています。これは、実質的に表面上の配当利回りの2倍以上の株主還元をしていることを意味します。有り余るキャッシュを市場に見せつけているわけです。こうした企業を空売りし、株価を下落させようと考える愚か者が現れないのは当然といえます。

例えば、フィリップモリス(PM)の場合は、配当と同程度の自社株買いをしています。2011年の配当と自社株買いの総額は約100億ドル!です。

次に、エクソンモービル(XOM)はどうでしょうか。なんと2011年の自社株買いの規模は配当の2倍以上で、配当と合わせた株主還元は約300億ドル!でした。
逆に日本企業はどうでしょうか。残念ながらやる気がないのか、する余裕がないのかは定かではありませんが、事実として自社株買いをほとんどしていません。株価が暴落しているのにも関わらずです。

このため、空売りしやすい格好の標的となってしまっているのが現状です。一般的に日本企業はキャッシュリッチであるといわれています。しかし、日本企業は配当も少なければ、自社株買いもしない。究極のインサイダーであるはずの経営者は、現在の株価が実力であると認めていると投資家はみなすでしょう。

あるいは日本企業は、あのオリンパスのように損失隠しをしているのではないか?日本企業は、公正価値を超えたM&Aや増資をすることによって株主価値を毀損するのではないか?株主は“本当に”キャッシュがあるのか不安になります。1倍を下回るPBRにはこうした疑念が反映されているのかもしれません。

また、日本は配当金再投資(DRIP)のような慣習(およびインフラ)がなく、配当金の支払いも年2回がほとんどで、配当による株価維持も期待できません。こうした状況が配当を受け取ったら株を売るいわゆる権利取りや、優待取りなどの短期的な行動を招き、株価の変動大きくする構造を作り出しているものと考えられます。

あまりにもボラティリティの高い株価は、投資家の信頼を損ね、投資意欲を減退させ、究極的には資金調達が難しくなり、国力の衰退につながると思うのですが。経営者は、株価が低すぎるというなら金をみせてください。