2017年2月12日日曜日

【書評】バフェット 伝説の投資教室 パートナーへの手紙が教える賢者の哲学

   

 1960年代のバフェット・パートナーシップ出資者への書簡をもとにした、バフェットの投資哲学の解説書。バークシャー時代のいわゆる「株主への手紙」を参考にした書物は多いが、バフェット・パートナーシップ時代の初期の頃の解説書は少ないので貴重。初めて知った内容も多く、興味深く読むことができた。

 このころのバフェットは、ジェネラル(いわゆるバリュー株投資)、ワークアウト(M&Aなどのイベントドリブン戦略)、コントロール(支配株主となって経営に参加)という異なる投資戦略を使い分けており、バークシャーが大企業になった後の、例えばビックフォー(アメックス、アイビーエム、コカコーラ、ウェルズファーゴ)に代表されるクオリティ株への長期投資戦略とはまったく異なっていたことがわかる。

 コントロール戦略においては、デンプスター・ミル社というネブラスカ州の小型株への集中投資を行い、多大なリターンを得た例について詳細に記述されている。

 このほか、クオリティ株への長期投資を行うようになってからのバフェットは、含み益の繰り延べ効果を強調することが多いと思うが、当時は繰り延べ効果に過度に固執するのはナンセンスで、十分に自信のある代替投資先がある場合には、含み益を実現させてでも銘柄の乗り換えを行うべきと述べている。

普段は非常に聡明な人たちが犯しがちな投資の過ちは、ほかでもなく節税目的によるものでしょう。私の友人で西海岸在住の著名な哲学者はいつも、大多数の人が犯す致命的なミスの原因は、自分が本当にしたいことは何かを忘れてしまうことにあるといいます。

 最近、日本株を中心に銘柄数が増えがちで過度に分散したポートフォリオになっている気がするし、NISAなど節税目的で購入した銘柄について、せっかく枠を使ったのだからと含み損の状況で売却をためらう自分にとっては考えさせる内容でした。自宅に1冊置いておいても損はないと思います。