2013年11月17日日曜日

【書評】となりの億万長者 トマス・J・スタンリー、ウィリアム・D・ダンコ (著)、斎藤 聖美 (翻訳)



あまりにも有名な本ですが、素晴らしい本です。最近、持ち運びしやすい新装版が出版されました。年収と年齢から算出する期待資産額の式が有名ですが、今回はそれ以外のことを書きます。

資産家はなぜ資産家で居続けられるのか?ということを考えることができます。考えれば当然なのですが、資産家はあまりお金を使いません。ここでいう資産家とは、100万ドル(およそ1億円)以上の純資産を持つ人々と考えてください。本書では、


  • 資産家の8割は一代で財を築いている。米国では移民に億万長者が多いが、これは彼らが必死に努力した結果である。資産家の子供はむしろ資産を食い潰すことが多い。
  • 彼らは収入よりも遥かに少ない支出で生活する。そして、貯蓄や投資をおこなう。収入の約2割を有価証券に投資するが、有価証券を売ることはめったにしない。また投資に対してじっくり時間をかける。
  • 見栄や世間体を取り繕うよりも、お金の心配をせず、経済的に自立することの方が遥かに重要であると考える。自動車、時計、住宅などに必要以上のお金を使うことを嫌う。ロレックスよりもセイコー、レクサスよりもカローラである。高級ワインやキャビアなんてもってのほか、バドワイザーとサンドイッチが最高と考える。

などが資産家の真の姿であることが示されます。この辺りは、要するに資産家が倹約家(ケチともいうが)ということですね。お金の大切さを理解できなければ資産家にはなれないのです。また、


  • 資産家は、課税対象となる現金所得を最小限に抑え、含み益を最大化する。年間の総資産に対する税金の割合は10%を遥かに下回る。

ということも指摘されています。この点は非常に重要です。サラリーマンは源泉徴収されているので余り意識しませんが、税金は支出の中で最大級の項目なのです。資産が大きくなるに従って現金所得を増やしてしまう(お金を使う)と、税金が膨らんでしまうのです。

そこで、倹約家である資産家は、合法的に税払いを最小化します。それは、お金を使わない(消費税を払わない)、資産を現金化しない(キャピタルゲイン・配当税を払わない)ということです。金持ちは派手にお金を使うべきとか、金は天下の回りものとかいう価値観が刷り込まれていては、資産家には程遠いといわざる得ません。
 
もう少し具体的にいえば、株式の含み益が拡大したらこまめに利益確定だ!という行動は、率先して税金を納めているようなものであることを理解する必要があります。資産を売らなければ、その含み益は複利で増えていくと期待されますし、無駄使いされる(かもしれない)税金を払う必要がなくなるのです。思慮深い投資家ならば、持続的成長が期待できる株式を適切な価格で買ったら、永久ホールドが基本です。